匣見

顔面荒野

日記:米津玄師のイントロ時間について

「最近のヒット曲はサブスク向けに開始数秒ですぐ歌い出す、米津玄師とか」という言説を見た。


https://twitter.com/pcefancom/status/1279982223102369793?s=21

https://twitter.com/ananarukie/status/1280378332874334208?s=21


そうか?と疑問だったので検証してみた。相関を求めたりするのは面倒だったので、
・5秒以内に歌い出しているもの
・6秒以上15秒以内に歌いだしているもの
・15秒以内にコーラスが始まっているもの
をリストアップするに留めた。




米津の曲は歌い出し/コーラスが早いのか

確かにイントロを挟まず即歌い出すものは一定数有った。とりあえず2017年以降に絞ってみて、MVが存在する有名楽曲のみ挙げれば

  • 馬と鹿 (2019)
  • 海の幽霊 (2019)
  • Lemon (2018)

がこれに当たる。


また、コーラスを含めてよければ、

も該当する。
Flamingoのアレ(アッウウアッみたいなの)や砂の惑星のソレ(パッウウッパッウン◎※✕@☆&みたいなの)をコーラスと呼んで良いかは疑問だが、まあこの本旨は「前奏を挟まずキャッチーさを担保する」というものなので、前奏と歌い出しを兼ねてる謎コーラスもとりあえず含むものとする。

逆に、これに当てはまらない、MVが存在する楽曲は、2017年以降に限れば

  • パプリカ
  • TEENAGE RIOT
  • 春雷
  • 灰色と青
  • orion

の5曲。7対5なので、ここ数年の「前奏が無い」米津玄師のイメージを形成する上では十分な数だと言えそうだ。

しかし、総数で言えば多いとは言えない。

総楽曲数78に対して、5秒以内に歌い出し/コーラスがあるものは18曲しかない。15秒以内にまて範囲を拡大すれば40曲となるが、それはどうなんだという気もする。



最近のものほど前奏が短くなっているのか

確かに傾向はあると思う。でも分母が足りない。

  • アルバム『diorama』(2012)は前奏がほぼ5秒以上(例外は『駄菓子屋商売』の開幕「海老、海老、海老どうしよう?みたいな呪文」のみ)
  • 2018~19年発表の10曲に対して5秒以内に歌い出し/コーラスが有るのは5曲

等の傍証はある。

でもそもそも全体的にアルバムが発売されると前奏が短い曲の割合は下がる傾向があり、最後に発売されたアルバムは2017年『BOOTLEG』なので、その年を除外すれば前奏が少ないものが多く見えるのは当然な気はする。この辺は『STRAY SHEEP』発売までは何とも言えないけど。

新アルバム『STRAY SHEEP』の新規曲は8曲。発表済の7曲中5曲は前奏が短いことを踏まえると、新規曲の内容を聞かずとも既にその傾向は見えている気はする。

結論としては、米津玄師のイメージに大きく関わったであろう曲は『LOSER』で、ここからMV再生数の桁が1つ変わる。以降のMV12曲の内、1億再生を越えていないのは『海の幽霊』『TEENAGE RIOT』2曲だけだから凄まじい。

それ以前の13曲の内、1億オーバーは『アイネクライネ』1曲のみ。次いで『メトロノーム』(6000万)『ゴーゴー幽霊船』(5000万)等と続く。ワンピの懸賞金かよ。また、その『アイネクライネ』『メトロノーム』も前奏が無くいきなり歌い始める。『ゴーゴー幽霊船』はそうではないが、開始10秒で「ワンツースリー」とやる気なさそうに言ってイントロが続き、一応この手法にある程度沿ってはいる。ので、この論には妙な説得力を感じる。


という訳で、明らかにLOSERの出た2016年が境になっている感じがある。
なので

  • 2016年以降の、
  • MVの有る曲(『砂の惑星』含む)の中から
  • 5秒以内に歌い出し/コーラスの始まる楽曲数

を見ると、13曲中7曲となる。
割合だけ見れば確実に、最近の曲は前奏が短いと言えそうだ。ただまあ、本気で統計取りたいなら他にやりようがあり、そこまではしたくないので「ほーん、まあそうなんちゃいまっか?笑」程度の結論しか出せていない。




リスト

*7/21時点(アルバム『STRAY SHEEP』未発売)
*米津玄師自身が歌っているものをカウント。『カイト』等プロデュース曲は除外。
*ドーナツホールなど公開とCD収録で年が違う場合はCD準拠(たぶんズレが有っても1年程度)
*複数CD収録曲は初出の方を参照
*『ピースサイン』のみインスト版が収録されているがこれは除外




5秒以内に歌い出し(9曲)

  • 馬と鹿 (2019)
  • 海の幽霊 (2019)
  • Lemon (2018)
  • クランベリーとパンケーキ (2018)
  • Nighthawks (2017)
  • ララバイさよなら (2017)
  • メトロノーム (2015)
  • アイネクライネ (2014)
  • 眼福 (2014)

5秒以内に謎コーラス(10曲)

  • 感電 (2020)
  • Flamingo (2018)
  • 砂の惑星 (2017)
  • ピースサイン (2017)
  • 翡翠の狼 (2017)
  • あたしは幽霊 (2015)
  • Blue Jasmine (2015)
  • リビングデッド・ユース (2014)
  • ドーナツホール (2014)
  • 駄菓子屋商売 (2012)

6秒以上15秒以内に歌い出し(15曲)

  • Flamingo(開始9秒) (2018)
  • ごめんね(開始8秒) (2018)
  • 飛燕(開始15秒) (2017)
  • Moonlight(開始11秒) (2017)
  • 爱丽丝(開始10秒) (2017)
  • 打上花火(開始15秒) (2017) *DAOKOとのコラボ曲じゃない方
  • neighbourhood(開始10秒) (2017)
  • ゆめくいしょうじょ(開始10秒) (2017)
  • orion(開始10秒) (2017)
  • こころにくだもの(開始11秒) (2015)
  • MAD HEAD LOVE(開始13秒) (2014)
  • WODDEN DOLL(開始13秒) (2014)
  • KARMA CITY(開始15秒) (2014)
  • 鳥にでもなりたい(開始7秒) (2013)
  • 乾涸びたバスひとつ(開始10秒) (2012)

6秒以上15秒以内に謎コーラス(7曲)

  • Flowerwall(開始11秒) (2015)
  • Undercover(開始10秒) (2015)
  • シンデレラグレイ(開始8秒) (2015)
  • TOXIC BOY(開始6秒) (2014)
  • ポッピンアパシー(開始7秒) (2013)
  • 笛吹けども踊らず(開始6秒) (2013)
  • ゴーゴー幽霊船 (2012)

*開始10秒後に「ワンツースリー」とだけ言ってからイントロが続く




おまけ:イントロ最長

  • 抄本(開始1分58秒後) (2012)

年別楽曲数(総数78)

2020:1 (楽曲『感電』)
2019:4 (シングル『馬と鹿』楽曲『パプリカ』)
2018:6 (シングル『Lemon』『Flamingo/TEENAGE RIOT』
2017:14 (シングル『orion』『ピースサイン』『打上花火』アルバム『BOOTLEG』)
2016:4 (シングル『LOSER/ナンバーナイン』楽曲『LOVE』
2015:16 (シングル『Flowerwall』『アンビリーバーズ』アルバム『Bremen』)
2014:13 (アルバム『YANKEE』)
2013:6 (シングル『MAD HEAD LOVE』『サンタマリア』)
2012:14 (アルバム『diorama』)





・コーラスから入る曲が思った以上に多く、ここは解釈が分かれそうな部分ではある。

・そもそもこれはコーラスなのか、人声なのか何なのか不明な音が異常に多く判断に迷う。『ピースサイン』は明瞭だが『ドーナツホール』はどうなの?『TOXIC BOY』のミストの虫みたいな奇声はコーラスと呼んでいいの?

・しかし、いきなりアレから入ることでキャッチーさを担保しているので、これを除外するのもなと……

・本当は全曲の歌い出し時間記録したりした方が良いんだろうけどめんどくさかった